支える低音、三つの温度
Ron Carter
ロン・カーターは2500枚を超えるセッションに参加した、史上最も録音されたベーシストだ。この3曲は同じ人物が三つの現場でどう振る舞うかを聴き比べる。自作『ブルース・ファーム』では自らグルーヴを敷き、ジョージ・ベンソンの一枚では対話役に徹し、ウィントン・マルサリスの若い世代のもとでは疾走する4ビートを支える。誰の音楽かでベースの仕事は変わる。
Blues Farm
Ron Carter — Blues Farm (1973)
自身の名を冠した『ブルース・ファーム』のタイトル曲で、カーターは曲の温度を決める側に立つ。のエレクトリックピアノ、のオルガン、の抑えたドラムが敷く分厚いレイドバックの上で、ベースラインは急がずブルースの間を歩く。自分の作品では、彼は待つ側ではなく決める側だ。
Beyond the Blue Horizon
George Benson — Beyond the Blue Horizon (1971)
ジョージ・ベンソンの『ビヨンド・ザ・ブルー・ホライズン』は、後の歌もの寄りのベンソンとは違う、ギタートリオ的な即興のスリルを追った一枚。ここでのカーターは自分から前に出ず、のフレーズの切れ目を聴いてから動く。のドラムが自由に暴れる分、ベースが低音の輪郭を守る役に回っている。リーダー作とは逆の耳の使い方が、同じ人の演奏だとわかりにくいほど違う。
Black Codes
Wynton Marsalis — Black Codes (From the Underground) (1985)
『ブラック・コーズ』はマルサリス兄弟世代の鋭さで書かれたアルバムで、カーターは数曲でこの若いカルテットに招かれた側だ。のピアノが和声を次々に動かし、のドラムが拍の内側で暴れる中、カーターのベースは自分の作品より鋭く速い4ビートを刻んで食らいつく。同じベーシストが、20歳以上年下のバンドの言語に合わせて自分の弾き方を変えている。